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【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百ニ回】 [ノモンハン考]

☆文中に「糧秣自動車」と言うものが出てくるが、私は、その「糧秣」の意味がわからなかった。

 <兵員の食糧と軍馬のまぐさ>だそうだ。

 つまり、食糧運搬車のことらしい。

  ◇   ◇

 第三十五柱 陸軍上等兵 <井前 正雄>

    「戦車もろとも散華」

「分隊長殿、戦車六両、糧秣自動車三両、前方百米を右から左へ・・・・・・」

 低い声だが、もう殺気に充ちてゐる、射手の井前一等兵である。二十時と云つてもこの蒙古の大草原ではまだ暮れかけといふ明るさだつた。

「よし、糧秣自動車を覘へ」

「はつ・・・・・・」 けたたましく一連発射し終ると、そのままサツと頭をひつこめた。

 たしかに手応へがあつた。がもう一連発しようと手早く装填して、覘ひをつけると、敵は何と思つたか、傷ついた一両を残して、全速力で逃げ始めた。

「なんのこつた、臆病者め」 張合ひぬけがした井前一等兵は、

「分隊長殿、ちよつと御馳走を分捕つてきますよ」と銃座を離れた。

「よせよ、危いぞ」 「なーに、大丈夫です」

 ソロリと壕から匐ひだした一等兵は、すばしくこく草の深い凹地つたひ、夕闇にまぎれて敵自動車の方へ近寄つて行つた。

 見ると、敵兵が二人、しきりに車体の故障を点検してゐる。

 豪胆な井前一等兵は、腰の短剣を引抜くと見る間に、いきなり飛びかかつてグツと一突き。それを引抜きざま、他の一人を横なぐりに殴りつけ、ひるむところを又一突き・・・・・・アツといふ間もない早業である。

 そこへ一人の戦友が心配して駈けつけたのを見ると、

「さあ、持てるだけ持つてくれ」と、パン、野菜、缶詰、砂糖などをポケツト両手に一ぱいかかへて、ニコニコしながら引揚げてきた。

「オーイ、食物ができたぞツ!」

 丁度現在地に来て二日間になるので食ふ物に気を配つてゐた激戦中のこととて、戦友たちは大喜び、たらふく食つて勇気百倍その勢ひでつひに敵を撃退してしまつた。

 ところが、その後まもなく、敵は口惜しまぎれに十数両の戦車をつらねて、復讐にやつてきた。

「何ツ、そんなものが怖いか!」

 機関銃では手ぬるしと見た井前一等兵は、単身、戦車地雷を二つかかへて飛出し、荒れ廻る一両の戦車にとびついた。

 轟然たる爆音! 敵戦車は見事粉砕された。が、同時に、井前一等兵の体も粉々に吹きとばされ名誉の戦死を遂げ国境守護神と化したのだつた。

   ◇   ◇

 一連の「ノモンハン美談」を読んでいくと、タイトルの人物の階級が、文章中のものより、上位になっていることが多い。

 戦死による「階級特進」なのだろう。

 上記の引用では、突然の死でショッキングだが、井前上等兵には陽性が感じられ、私のイメージとしては、『封神演義』で死んだ仙人が封神台にピューンと飛んで行くように、亡くなった井前上等兵が、ピューンと靖国神社に飛んで行ったかの様な思いがよぎるのである・・・。

                                              (2009/02/05)
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