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【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百三回】 [ノモンハン考]

☆数ヶ月前に買った本で、買ったまま忘れていたのだが、部屋から「発掘」されたので読んだ。

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             『戦前の日本 (武田和弘著・彩図社)』

 いかにも「戦後(日教組教育下)」の語彙が使われているが、コラム風に軽快に書かれた文章で、とても読みやすく、私にとっては勉強になった。

 ノモンハン絡みでは、往年の名投手スタルヒンが、ノモンハン事件の勃発の後に「須田博」と改名させられたことや、

 明治の末期に起こった「株ブーム」は、南満州鉄道株の熱狂にはじまったことなどがさりげなく記されていて面白かった。

 また、昭和一桁時の「貿易摩擦」で、イギリスの圧力で、インドへの紡績輸出市場から締め出された日本が、満州経営に力を入れていくことが、先の大戦の遠因になったことも書かれていた。

 ・・・では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。

   ◇   ◇

 第三十六柱 陸軍上等兵 <池田 兼行>

    「死ぬまで防毒面を握る」

「かうなつたからには白兵戦だ。みんな敵の近づくのを待てツ!」

 陣之内上等兵が怒鳴つたので、池田一等兵も、じつと敵の接近するのを待つた。

 その日早朝からの激戦で、絶え間ない砲煙に覆はれながら、池田一等兵等の小隊は最後まで頑強に戦つてゐたが、ふと気がつくと、いつの間にか、池田一等兵等七名は小隊の主力から離れて、数十倍の敵の真只中にはまり込んでしまつてゐたのだ。

 我が方を寡勢と見た敵は、図にのつて銃火を浴せながら、ジリジリと包囲網をちぢめてきた。もうかうなつたら、白兵戦で行くよりほかなかつたのである。

「いいか、小隊の主力の方向に向つて行くんだぞ!」 また、陣之内上等兵が叫んだ。

「よし来たツ!」

 六人の戦友が答へる。

 ひつきりなしに射つてくる敵の小銃弾は七人の目の前に、パツパツと小さな砂煙をあげた。六人は銃剣を握つたまま、豹のやうに身構へてゐた。

 突然、池田一等兵が、

「やられたツ」

 と叫んで、ドウと倒れた。

 ハツとして六人の戦友が振返ると、池田一等兵は血潮を吹きながら、

「お、お、おれは、もう駄目だ。みんなしつかりやつてくれ!」

「そんな弱いことを云ふな。もう少しだから頑張れ

 すると、池田一等兵は、苦しげに身もだえしながらも、咄嗟に防毒面を肩からはづして、陣之内上等兵に渡しながら、

「こ、これを、埋めてくれ」

「た、たのむぞ・・・・・・おい、みんな・・・・・・永いあひだ世話になつた。有難う。・・・・・・、みんな、うまく部隊に帰つてくれよ・・・・・・成功を、祈るぞ」 云ひながら、呼吸は次第に細くなつて行つた。

 臨終の際まで、防毒面を敵に渡すまいと念じ、戦友の無事脱出を祈るその床しい心根に、戦友たちは思はずグツと胸を衝かれて、涙ぐんでしまつた。

   ◇   ◇

 ・・・なぜ、防毒マスクを必要としたかは、後日、記すことになりましょう。

                                                      (2009/02/06)
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