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【『ノモンハン : 見下ろす神、地を這う神』 第百六回】 [ノモンハン考]

☆久々の更新ですいません^^;

 「ノロ高地」について資料を読んでいたら、その多量の情報に混乱してきて、スランプに陥ってました。

 とりあえず、70年前の今月、ノモンハン事件は始まっています。

 ともかく、書けることを書きます。

 ・・・では、『ノモンハン :地を這う神々の境地』です。

   ◇   ◇

 第四十柱 陸軍中尉 <畠中 三次郎>

    「一心協力爆弾自動貨車を動かす」

 機銃弾、手榴弾を満載した自動貨車が第一線に向つて走つて行く弾丸補給の重大任務を帯びて、それに乗つてゐるのは畠中中尉と、操縦手の迫一等兵である。

 由来危険なことの形容に「爆弾を抱いて走る」といふ言葉があるが、これは形容ではない、文字通り正に爆弾と共に往くのである。しかも敵弾雨飛の間を縫つて往くのである。もし一弾がそれを掠めたら、全弾が一度に火を吐いて、トラツクもろともふつとんでしまふにきまつてゐる。だから戦場でのこの役は、危険中の危険、決死中の決死の仕事なのである。草原の間、あちこちに散在する凹地を巧みに避けて、自動貨車はハルハ河畔近づいていつた。

「敵に見つかつたらしいぞ」

 敵弾が次第に近くへ落ちてきたのである。

 一等兵はわざと速力を出したり、右に左にうねつたりくねつたりしながら、進んでいつた。敵弾は進んでゆくうしろへと落ちた。

 中尉は前方からじつと目を離さない。そこには硝煙が暗く天を覆うて撒き上がつてゐる。戦は酷だ。

「前線ではどんなに我々を待つてゐるだらう」 中尉は思はずつぶやいた。心は矢竹にはやるが、この悪路と、この敵弾をどうしよう。と、考えてゐる時車は凹地の湿地の中へ落ち込んだ。車体は一寸動きさうにもない。

 中尉はひらりととびおりたが、ヅカヅカと凹地の湿地の中へはいり込んで、車体に手をかけた。

 一等兵の操縦に呼応して、中尉はあらん限りの力をふるつて車を押した。たつた二人でも、一心は恐しい、協力は尊い。トラツクはゆらゆらとゆらぎ出して、とうとう凹地から抜け出たのである。勇躍トラツクへとび乗つた中尉の姿はまるで泥人形である。

 再びトラツクが勢ひよく走り出したが、やがて突然   中尉はうしろへのけぞつた。

 一等兵がふりかへつて見ると、胸から鮮血がふき出してゐる。肩に手をかけると、かすかな声が唇から洩れてきた。

「本望……本望」 途端に声が声が絶えたのである。

 一等兵は中尉の無事を念じつつ。再びハンドルを握ると、車は弾丸と、重傷の中尉を乗せて走り出した。

 一日千秋の思ひで待つてゐた第一線では、重傷の中尉の姿に熱き感激の涙をそそぐと同時に欣喜雀躍、暴戻ソ軍撃退へと邁進したのだつた。

   ◇   ◇   ◇

 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の『恐怖の報酬』を思い出さされる、今回の戦記でした。

                                                       (2009/05/12)
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