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[国立歴史博物館 特別企画「佐倉連隊に見る戦争の時代」を見て MUTI筆] [戦争随筆(ゲスト)]

 [国立歴史博物館 特別企画「佐倉連隊に見る戦争の時代」を見て MUTI筆]

【以下は、MUTIさんより、私個人宛てに書かれたものですが、雰囲気いいエッセイになっているので、許可を得て転載します。私一人のためだけには勿体無い^^】

7月8日(土)昼前、急遽誘った知人と共に二人、JR総武本線佐倉駅に着き、北口から出る。「国立歴史民俗博物館」との標記が大きくされたバス停に向かいバスの時間を確認するが、なんとも中途半端な時間。歩く。

 北に向かってまっすぐ行き、5分ほど行って道が細くなったところの分岐を標識にしたがい左(西)に曲がる。

「(国立歴史民俗博物館のWebページで提供している案内図では、ここは左に曲がらず、右に行ってすぐに左への細い道に入る経路を記していることを帰宅後に確認。とはいうものの、地図でみると、標識にしたがった我々の経路も、Web紹介の経路も、距離的にはあまり差は無いのでどちらでもよいと思う。)

しばらくすると道は北西に向かう。水田地帯だ。所々にある道案内の標識にしたがい、本格的に成長する稲の中の細い道を行く。

実にのどかな風情。車も人にも行き会わない。「収入さえあるなら、こんなところで生活したいね」などと話しつつ所々にある標識にしたがって歩く。今度は右折。谷間の道にしたがって登り、登り切ったところが市民体育館の西であり、大きめの通りに出る。西北西へと延びる道を進む。相変わらず交通量が少ない。「大きい道に出てもこれだけ人がいないのはおかしいのでは?」と疑問を示す知人に、「このコースは裏道だから」と答える。

佐倉中学、佐倉東高校の間をとおり、かつては佐倉城跡であり、旧軍の歩兵連隊等が所在した公園地帯に出る。佐倉城の概要を示す掲示板によると、石を使わない築城が特徴の城とのこと。

道路脇に、旧軍が荷物運送のために工事した道路の開通を記念した小さな石碑があった。
百合の花が所々に咲く空堀の遺構を横に見ながら曲がった道を行くと生け垣の向こうに国立歴史博物館らしき建物の上部が見えてくる。一段高くなったところに大きく浮かび上がった「 歴 博 」の文字が印象的。JRの佐倉駅からは、やはり30分ほどかかった。

 と、ハーモニカの音がする。博物館に隣接した芝生の上で高齢の男性がハーモニカを吹いている。施設と直接の関係はなさそうだが・・・

知人が、「そういえば、このハーモニカの人、靖国神社にもいた気がする。」と。
何か使命感を帯びているかの風情といい、我々が目的とする特別企画や講演に関連した行動としてハーモニカを吹いているのだろうか? 名を知らぬ曲を聞きつつ、建物に入る。

 まだ第271回歴博講演会「佐倉連隊と日清・日露戦争」までは時間があるので、常設展にはいる。Webページによると、「常設の総合展示は、日本の歴史・文化の流れの中から、現代からみて重要なテーマを選び、それらを生活史に重点をおいて構成したものです。」とのこと。

よくできた縄文土器の複製や、福島県の沖ノ島の紹介、戦国末期の京都、四条・室町通りあたりの立体模型を興味深く見る。リニューアル中で入ることが出来ない第3展示室をとばして第4・第5展示室にはいると、民俗関連の精神世界を示す展示と、近・現代展示。これが非常に面白かった。第4展示室は、水木しげるの精神世界の原点と言うべき日本伝統のおどろおどろしい点や、民俗を構成する精神世界の図示が印象的。私の知人に言わせると、男根神・女陰神あたりの展示が無いのは残念とのことだが・・・

特に興味深かったのは近現代をあつかう第5展示室。卑属な部分がちゃんと再現された往年の町並みが印象的。一コーナーで米国のサイレント映画が上映されている。サイレント時代のコメディ芸人の真の体当たり演技は実に素晴らしい。弁士・音楽の録音がついているのが全くもって残念だが、この施設で上映する目的が往年の上映状況の再現なのだからやむを得ない話か。

ここで、講演会に入り損ねたことに気づく。大失敗。まあ、見たことのないサイレント映画が見えたからいいか、と妥協する。以上、常設展、とばし見気味に見て、2時間弱。

 ようやく本日のメインイベント、特別企画「佐倉連隊に見る戦争の時代」に入る。
初めのコーナーは「佐倉城から佐倉連隊兵営へ」と題され、佐倉城の簡単な歴史から、明治維新をへて近代的兵制である徴兵制による陸軍の部隊が所在するようになるまでの歴史、遺構・遺跡が紹介される。

 つぎは「佐倉連隊の兵営生活」とされ、佐倉連隊においてなされた兵の訓練、装備、生活が当時の資料及びそれらを元に作成された展示により説明される。

コーナー入り口すぐ脇に、昭和初期の代表的歩兵連隊における、分隊・小隊から連隊・師団にいたる各組織の人数とその長の階級を書いた図が掲示されていたのは、一般の人向きの物として高く評価できる。(900円のパンフレットにはこの図は無い。)

また、無可動の38式歩兵銃に、透明プラ板に空いた穴から腕を通して触って重さの体験ができるようになっていたのは「印象」展示として面白い。
(出来れば、船の科学館の青函連絡船のコーナーにある、荷役をしていた婦人の荷物の重さを体験できる展示のように、完全軍装時の重さが体験できればもっとよかった。)

軍装の展示に、何年(頃)のもの、という説明がなかったのは残念だが、一般の人には興味・意味のある話ではないだろうから、説明の煩雑面を避けるためには当然か。

内務班における悲惨な状況の紹介として昭和27年の日本映画「真空地帯」が上映されていたのは政治的に問題ある気がする。(原作者が野間宏、映画の監督が山本薩夫とくれば、映画が非政治的とは言い難いわけで。)
たまたま横にいた、大変年配の方が、「いやらしいところばかりまとめてる」とつぶやくのを耳にする。

 そして、「佐倉連隊と地域」と題されたコーナーにはいる。佐倉に所在した部隊と地域の密接な関わりを、やはり当時の資料により淡々と展示する。佐倉の町が、部隊の城下町的な立場にあり経済的に密接な関係を持っていたこと、また地域社会や在郷軍人会・各種婦人会等が積極的に応援していたことが示される。

 最後は「佐倉連隊と戦争」のコーナー。佐倉から出征した部隊が西南戦争、日清戦争、日露戦争、満州での戦い、上海事変(第二次)にはじまるチャイナでの戦い、「太平洋戦争」という、近代日本の行った主要な戦いにおける戦闘の概要と、どれだけの犠牲を払ったかについての展示がなされる。

このコーナーの入り口正面に、歩兵第二連隊、歩兵第五十七連隊、歩兵第百五十七連隊を初めとする各部隊の経歴が佐倉に残った留守部隊を含め、分かりやすく展示されていた。旧軍の留守部隊による再編システムと戦争末期の大動員等のため、旧軍部隊それぞれの出自と経歴はいろいろ混み合っていて、相当の専門家でないと把握しきれない事をかんがえると、この図はこの特別展の白眉と評価できる物だと思う。(やはりパンフレットには無し。別の表はあったが。)

基本的に各戦闘の概略と犠牲、当時の日記、作戦図等の展示。

日清戦争の展示に、「いわゆる旅順虐殺事件について」という展示があるそのすぐ横に、捕虜になった清の軍人が捕虜収容所での丁寧な扱いに感謝して書いた漢詩が訳と共に展示されており、政治的なバランス配慮に感心する。

上海事変の際の作戦図や、その他チャイナでの作戦等、あまり見ないだけに興味深い。

一部の部隊が増援のため、ノモンハンにも参加していたことを知る。(展示の量は特に多いわけでは無い。)

戦後になって有志が復元した歩兵第五十七連隊の軍旗が展示されていて、そこに、靖国の遊就館から借りたとの標記があり驚く。(ひょっとして入り口近傍でハーモニカを吹いていた人は、この連隊旗に関係した方だったのだろうか?)

最後に、千葉県内にあった旧軍の施設・演習場等が現在どうなっているかの一覧表で展示は終わる。以上、飛ばし気味に見て一時間強。

 帰りは、正門(?)である北の門から出る。旧軍部隊の衛門があったことを示す看板を横に城跡から下ると、国道296号線。裏門とは全く違って国道としては普通の交通量。

家並みの向こうに京成本線をチラチラと見ながら東に向かって15分ほど歩けば京成佐倉駅。駅前にあるラーメン屋の異様な店名・店構えにあきれつつ、駅へと入る。

* * * * * * * * * *

 というわけで、常設展含めて、印象的・興味深い展示があり、蘭さんにも役に立つのではないかと思います。

本来こういったレベルの展示は、全国各地それぞれに、地元から出征した部隊についての展示・記念館が常設されていてしかるべきなんでしょうが・・・

 展示していた事象の背景、、どういう大状況で、どういう理由でこういうことがなされていたのかという視点は有りませんでしたが、それは、「民俗」博物館の限界というか、そこに踏みいると諸説紛々・魑魅魍魎の世界に入るのでさけたというか・・・

 あ、「佐倉連隊関連略年表」、ラストは「ソ連軍の捕虜となった歩兵二百七十連隊兵士、シベリアへ送られる。」でおわっているが、その後の帰還まで書き、展示の最後にもシベリアで犠牲になった人の記録が簡単でいいから紹介されているべきだったのではないか。まあ、それは「戦争の時代」ではないので展示の対象でない、とか言うことになりそうな。
                  (2006/07/10に書かれる^^)


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